五日目…………リフィル・アーチェ・ナタリア・リヒター(+ヒスイ)





辿り着いた邸の様子は前評判を聞いていたものの、それを抜かしても一度は必ず驚く。
このデカさの建物が元々あるわけが無いから、確実に増築をしたな…。

現在、はアーチェの箒が楽しいらしく乗せてもらって終始機嫌が良い。
しかし落ちないか心配だな…。大体あんな短い手足じゃ、落ちても満足に受身とれねえだろうが。


リヒターも同じ事を思っていたらしい、そっとを箒から降ろす。
それに対してアーチェは文句を言っていたが、は何故かリヒターの腕でも問題ないみてえだ。
あーあ、髪の毛玩具にされてんぞ。





「ひすいおにーちゃ」



ん?


呼ばれた声に振り返ると、がリヒターの影に隠れながらこっちを伺っている。
呼んだよな、今。
なんで隠れてんだ?




「ひすいおにーちゃ…」



もう一度顔を覗かせて名を呼んだかと思えばまた隠れる。
一体何なんだ????






「照れてるのよ」

「うお!吃驚した…。何にだよ?」


いきなり参入したリフィルの言葉に俺は疑問を抱く。




「貴方、とあまりまだ接点が無いわよね?だから少し人見知りしてるのよ。でも話しかけたいからああやって気を引いてるんだわ」





……なんだそれ。
















………可愛いじゃねーか。








「リヒター、寄越せ」
「……乱暴にするなよ」


しねえよ!

失礼な奴だな。



小さい手が俺の方に伸ばされる。
ああ、コハクのちいせえ頃を思い出す。







、さっさと中に入って遊ぼうぜ」
「…あいっ!」




最初は押し付けからだが、今はちょっと世話役に参加する事を引き受けて良かったと思える。
こんなに慕われているのなら悪い気はしない。
























ようやく邸の雰囲気にも慣れ、ともしっかり打ち解けた後問題は発生した。


「そろそろ夕食の準備をしなくてはなりませんわ。任せてくださいませ、このナタリア・ルツ・ランバルディア!張り切って……」

わーーーーー!!!待て待て!!!料理は俺がする!!」



サレ達が顔面蒼白になってまで俺をこのグループへ押しやった原因。


こいつら、味覚はまともなくせに自分達の料理の酷さに気付かねえから性質が悪いんだよなぁ…。
しかも味見しねえし、そのくせ人に食べさせたがる。










「ヒスイがーー?ちゃんと出来んのー?」


少なくとも、お前よりは安全だ。



「貴方、大丈夫なの?良かったら手伝うわよ」



大人しく待っててくれ、それが最善の手伝いだ。



「……任せた」



自分の料理の腕は知ってるみたいだな。



「まあ!けれど殿方だけに任せるのも悪いですわ」



任せてくれ、心から。












「あーちぇー、もっかいほーきのせてー」
「おお?オッケー☆このアーチェさんに任せなさい!じゃあ外に行くわよ」

「あら、だったら見ていなきゃね。落ちたら大変だわ」



の言葉に二名が脱落した。
後はこの姫さんだけだ。





「なあ、ナタリア。俺は一人で大丈夫だから、達についててやってくんねーか?」
「でもあちらにはリフィルもアーチェもいますのに…」
だってナタリアに見ててもらったら嬉しいと思うぜ?」


我ながら苦しい言い訳だ……。




と、思ったのは俺だけだったようで




「まあ!そうかしら!でしたらわたくしもご一緒してきますわ。お願いしますわね、ヒスイ」




すんなりとナタリアは達の輪に混じって行った。


ふう…と息を吐くと、残っていたリヒターから何やら微妙な視線を頂いた。





「なんだよ…」

「いや…。大変だなと思っただけだ」



なんで他人事なんだよ!!!!テメーだって原因の一つだろうがぁ!!!




相手にするだけ疲れるし、だってあれだけはしゃげば腹も減るだろう。
さっさと準備しちまおう。

あーあ、ガイやロニの事言えねえなあ。


俺もすっかりの面倒見るの楽しくなっちまってらぁ。























料理をしている最中、俺だけキッチンにいるわけだから他のメンバーの様子は声しか聞こえない。
集中しながらも、耳を傾けてしまう。
さっきから楽しげな声は聞こえてくるが、若干の不安要素も聞こえてくるからだ。






「そーれっ空中三回転捻り〜〜〜!!」
「あきゃーーーー♪」

、手を離してはなりませんよっ!」
「アーチェっ!余所見しないで!」

「りひたーおにーちゃぁっ!たかいのー」
「見てるから、手を離すんじゃない!」







・・・・・・・・・・・・出来るだけ急ごう。
























ようやく夕食を作り終え、俺は急いで五人を呼びに行く。
庭へと向かえば、何故かそこには正座しているアーチェと説教をしているリフィル。
はと言えば、青い顔をしてリヒターにしがみつき、ナタリアに慰められていた。





「…何が…あった?」

「アーチェが調子に乗り、箒を急スピードで飛ばした。それには酔ったんだ」



を喜ばそうとしたらしいが、流石にやりすぎたと思っているらしくアーチェも落ち込んでいた。





「…う〜〜〜…」

「大丈夫か、。水飲みに行くか?」

「きもちわるいの〜〜〜〜…」




さっきまでのはしゃぎようが嘘なくらい、ぐったりしている
これではすぐに飯は無理だな。




「お前等、先に食っておいてくれ。俺、寝かせとくわ。今食欲無いだろうし」
「…そうね。任せて良いかしら。後で貴方との分、別にして持って行くわね」
「頼む。ナタリア、水と果物だけ先に用意してもらって良いか?」
「任せてくださいませ」



を受け取り、二階へと向かう。
なるべく振動を与えないようそっと歩く。


今日俺達が寝る用にした部屋を開け、ベッドにを寝かせようとした………が






、手」
「やあぁ〜〜…」



がっちりと俺の服を掴んでいるの手。
この体制じゃあ楽になるものも楽にならないだろ。
なのに、一向に離れようとしない。




「…ったく、仕方ねーな…」



を横抱きに変え、なるべく俺に寄りかかるようにしてやる。
俺自身も壁に背を預け、が楽になるように体制を整える。


すると少し楽になったのか、顔が安らいできた。




目がだんだん、寝そうになってくる。
おいおい、飯を食う前に寝かせたらまずいだろ。




、寝んなよ」
「にゅー…」
「にゅーじゃねえよ。飯食ってからにしろ」
「んー……」



ダメだなこりゃ。

さて、どうしたもんか…。









「ヒスイ、入ってもよろしくて?」




ノック音が響き、その後ナタリアの声が聞こえた。
さっき頼んだやつを持ってきてくれたか。




「おお、いいぜ」

「失礼します。あら、寝ていますの?」

「んーちょっとあぶねえな。寝かす前に食わしてえんだけど」

「そうですわね。あ、そうそう私達でこれを作りましたの」







・・・・・・・・・・・え!?






ナタリアが差し出したそれは、淡い黄色をした液体。
何も言われず、渡されたのなら何も疑問に思わなかっただろう。



しかし、今彼女はこう言った。






“私 達 で こ れ を 作 り ま し た の”






××料理人達がかぁ!!!!?








怪しい…っ!

これが禍々しい緑色や、黒色をしていたならまだしも



逆に美味しそうな色をしていることが怖い!!!!


中身はなんだ!?何が入っている?






「ナタリア…ちなみに材料は?」

「果物しか入れてませんわ」




果物でも外れはあるからなあ…。
種の多いアマンゴとか入ってたら最悪だぞ?




俺が戸惑っていると、先程まで眠そうだったがばっちり目を覚ましてそのドリンクを見つめていた。

おいおい、なんだそのキラキラした瞳は。

お前が期待しているようなもんかどうかはわかんねーんだぞ!?





「なたりあ、これのんでいーの?」

「ええ、の為に作ったのですから。どうぞ」

「あーがとぉ」




ま、待て!!!せめて先に俺に一口確認させ………っ






俺が手を伸ばすより早く、はその液体を飲み込んだ。






「………」





ピタリと固まった


やばい、非常にヤバイ!!!!





もしこれで体調でも崩したら、あいつ等(保護者メンバー)からの苦情が……!!!!










「なたりあ、おいちぃねえ」

「良かったですわ。皆で心を込めたおかげですわね」

「ひすいおにーちゃ、これおいちぃの」




「…へ?あ…良かったな!美味いのか、良かったな!」







美味い?!あのメンバーが作ったのに?



もしかして、奇跡でも起きたのか?
それとも体調が悪い所為で味覚音痴に…?


俺は残りを少し分けてもらって飲んでみた。






「…美味い」


「でしょう?私達だってやる時はやるんですのよ」










正直驚いた。

柑橘系を中心に、ミルクベースで作られたそのドリンクは本当に美味かった。







…そんなに、心配することでもなかったのか。










俺は少し前の自分を殴りたくなった。

コイツ等だって普通に料理しようと思えば出来る筈なのに、疑いしか持てなかった自分を。

体調の悪いを想って作ったものが不味いわけないのだ。










「後、それから少しでも食べた方が良いと思ってお粥も作ってみましたの」

「へーどれど……
れっ!!?!




お粥、と呼ばれたそれは全くそう言った外見をしていなかった。
真っ黒な米???と思わしき流動状のそれと、正体不明な具材の数々。
何かの足が見えるぞ!!?!







「さあ、召し上がれ」

「あーがとぉ」

「わーーーーーー!!!待て、!!!」



前言撤回!!!!!

やっぱコイツ等に料理をさせては駄目だ!!!!!!